SBIと新生銀、Circleに共同出資
日本の大手金融グループであるSBIホールディングスは2025年6月9日、米国のCircle社が実施したニューヨーク証券取引所(NYSE)での新規株式公開(IPO)に対して、5,000万ドル(約72億円)の戦略的投資を実施したと発表しました。
この出資はSBIホールディングスと傘下のSBI新生銀行がそれぞれ2,500万ドルずつ拠出した共同投資であ、合計5,000万ドル規模であることが報告されています。
Circle社は米ドル連動型ステーブルコイン「USDコイン(USDC)」を発行する米国企業であり、同社株式は米国時間6月5日にNYSEへ上場されました。
IPOでは公開価格31ドルに対し初値69ドル、終値83ドルと大幅な値上がりを記録しました。これは2021年にナスダックへ上場した大手仮想通貨取引所Coinbase(コインベース)以来の大型フィンテック企業IPOとなります。
今回の出資によりSBIグループは、機関投資家の強い需要が集まったCircle社株の主要な引受先の一つとなりました。
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Circle社IPO成功が仮想通貨市場に与えるインパクト
Circle社のIPOは予想を上回る好調な滑り出しを見せ、1株31ドルで3,400万株を売り出し、約10億5,000万ドル(約1,520億円)の資金調達に成功しました。
この株式上場は仮想通貨業界における大型IPOとして市場の注目を集めており、市場関係者は、Circle社の成功が低迷していたIPO市場の活性化につながると分析しています。
また今回の成功は、ビットコイン(BTC)などの資産よりも、法定通貨に連動するステーブルコインへの機関投資家の関心が高まっていることを示したとも指摘されています。
USDCは時価総額600億ドル(約8.7兆円)を誇る世界第2位のステーブルコインで、その安定性から企業の国際決済や投資家のリスク回避手段として広く活用されています。
「BinancePay」がデフォルト通貨として採用
SBIホールディングス、日本でのUSDC普及戦略を本格化
規制整備を追い風にした国内展開
SBIホールディングスはこれまでもデジタル資産分野で積極的な戦略を展開しており、米Ripple(リップル)社やR3社への出資などを通じてブロックチェーン関連企業との連携を深めてきました。
特に近年は、米ドルに連動するステーブルコインを使った迅速な国際送金手段への期待が高まっており、SBIグループは日本国内での規制緩和を見据えてUSDC発行元のCircle社との提携を推進してきた経緯があります。
合弁会社「Circle SBI Japan」設立でUSDC普及を加速
2023年11月には両社間で包括的な業務提携に向けた基本合意が交わされ、それ以来USDCの国内普及促進や新しいユースケースの開発で協力を深めています。
SBIグループは、傘下の暗号資産取引所「SBI VCトレード」を通じて2025年3月に国内初となるUSDCの取扱いを開始しました。また、USDCの普及促進を目指してCircle社との合弁会社「Circle SBI Japan株式会社」を設立することも発表しています。
SBIホールディングスの代表取締役会長兼社長である北尾吉孝氏は次のように述べ、両社の協業関係とUSDCの活用基盤を一段と強化していく考えを示しました。
日本でUSDCの普及に主要な役割を果たせることを誇りに思います。
今回の取り組みは金融アクセスを向上させ、ブロックチェーン金融のイノベーションを推進するものであり、当社が目指す決済・金融の未来像に一致するものです。
日本国内で「USDC」の普及促進へ
SBIとCircleが描く日本のデジタル金融の未来
USDC、国内主要取引所で取扱い拡大へ
日本では2023年6月の改正資金決済法により、ステーブルコインの規制が明確化され、海外発行のステーブルコインも条件付きで利用可能となりました。
この法整備を受けて、Circle社とSBIの提携により、USDCは日本で初めて認可された米ドル連動型のグローバルステーブルコインとして導入されています。
SBI VCトレードでのUSDC提供開始(2025年3月)に続き、国内大手の暗号資産取引所であるBinance JapanやbitFlyer、ビットバンクなども今後USDCの上場・取扱いを予定しており、日本市場でUSDCを含むステーブルコインの流通拡大が本格化しつつあります。
金融システム統合構想
米Circle社のジェレミー・アレールCEOは、日本がWeb3やブロックチェーン技術の採用で世界をリードしており、安定した規制環境のもとでUSDCを日本市場に導入する重要性を強調しました。
今後はSBIとCircle社が共同設立予定の「Circle SBI Japan」を拠点に、日本の金融システムにUSDCを広く統合する取り組みが進められる見通しです。
こうした動きを通じて、両社は高まるステーブルコイン需要に応えながら、日本のデジタル金融イノベーションを牽引していくと期待されています。
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=144.58 円)
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Source:SBIホールディングス公式発表
サムネイル:Shutterstockのライセンス許諾により使用






























